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[ スイーツ ]

2022.01.30

【実食レポ】材料は米と砂糖のみ?!戦前から売れ続ける隠れたご当地銘菓「五万石」の秘密

岡崎さまはアーヨイコノシャンセ
お城下まで船がつくションガイナ
ヤレコノ船が着く
お城下まで船が着く
ションガイナ ヨーイヨーイ
ヨイコノシャンセ マダマダハヤセ

小唄「五万石」は、岡崎市民なら社会科の授業で習うそうですね。私は外から来たので、YouTubeにて視聴。便利な世の中です(笑)
かき鳴らされる三味線はテンポが良く、心地よいメロディが響きます。昔の歌にありがちな悲壮感はなく、伸びやかに歌い上げられる最後の一節には小気味良ささえ感じました。

この田舎唄は幕末から唄われ始めたそうです。
岡崎さま、つまり岡崎城主には代々徳川譜代の臣が選ばれていて、「ウチは五万石の小藩だけど、『天守閣』が許されていて城下まで舟が着くんだよ!」っていう、町民たちの自慢の気持ちが込められています。

そう思って聴くと、なんだか可愛いく思えてきますね(笑)

「五万石」という名前のお菓子がある?!

「五万石」という名前のお菓子がある?!

◆五万石 162円(税込)

明治28年創業の老舗和菓子店「五万石藤見屋」。屋号にも含まれる『五万石』を冠するお菓子があるという事で、さっそく調査してきました。

唄に由来を持つこの菓子は、帆掛舟の形をした小さな「おせんべい」です。材料はシンプルにもち米と砂糖のみ。小袋の中に、思ったよりたくさん入っています。これで162円は安い。

今は製法が変わりましたが、当時使っていたという、棒状の金型を見せてもらいました。たくさん舟の型が付いていて、中には「五」「万」「石」の文字が!
なるほど、伸ばした生地の上でこの棒をくるくる回すと、あのお菓子の形になるというわけです。

この「五万石」は戦前から販売されています。
長い歴史の中には、古き良き時代を感じさせるほのぼのエピソードも。

型どった小舟の生地は、焼く前にまず乾燥させます。現在は店内の機械で乾燥していますが、昭和の初め頃はお店の屋上で一つ一つ並べて天日干ししていました。
この干してある小さな生地を、スズメがつまんで持って行ってしまうのが日常茶飯事で。さらにその生地をスズメが地面に落とし、それを近所の子どもが拾って食べていた…と。

おもしろ可愛いオヤツ連鎖(?)が発生していて、つい笑ってしまいました。
「五万石」は、お米が好きなスズメ、甘いモノを食べたい子どもたちにとって、密かなご馳走として人気を博していたようです。

「五万石」を実食!

「五万石」を実食!

さて、お味の方に興味が湧いてきたところで実食に移りたいと思います。

つまみ上げてみると、薄くて硬いおせんべいのカケラで、大体見た時の印象そのままといった感じでした。
さっそく口に放り込んでみます。

「パリパリパリ!」と、大きな音が響いてビックリ。食感はかなり硬いのですが、非常に薄いので食べづらさは感じません。この、硬さと薄さの両立が、噛み砕く音を派手にしているようで、「ああ、噛んでるな~」と、まさかの方向に意識が飛んでいきました。

気になるお味というと。
口に入れた時に感じたのは、「ん?…甘い、のかな?」というほど控えめな甘さ。
材料がもち米と砂糖のみとは聞いていたので、まあこんなもんなのかな~と思いながら咀嚼していると…
「あ、これ…お米の甘みだ。」
硬くてなかなか飲み込めないせいで、たくさん咀嚼が必要ですが、噛めば噛むほど口の中に広がるのは、馴染みのあるデンプンの甘み。

派手で分かりやすい味ではないけれど、これは何というか、クセになります。
気が付けば次の小舟へと手が伸びている…
うーん、もち米と砂糖…侮りがたし。

素材の持つ本来の味や特性を、非常に上手くいかしています。最初は音を楽しみ、こなれてくると口の中にほのかな米の味わいが広がるという二段活用。
パリパリとした食感や音に楽しさを持たせたのは、今よりも噛む事が一般的だった明治時代に、食感を突き詰めた結果だそうです。

砂糖が貴重だった当時。
お菓子を貴重品にしてしまうのではなく、みんなの手の届く値段に抑えつつ、美味しく楽しく食べてもらいたいという藤見屋さんの試行錯誤の結果が、この「五万石」だったのではないでしょうか。

明治時代の流通、庶民の生活、当時一般的だった食のあり方などが工夫として反映されていると思うと、この「五万石」は非常に深い魅力を持つお菓子だと感じました。

ちなみに「五」「万」「石」の字がハッキリと出ているものはラッキー五万石だそうです。
みんなでシェアしつつ、探しながら食べるのも楽しそう。

甘さ控えめで硬いという特徴を活かして、お子さんのオヤツに出してみてはいかがでしょうか。顎のトレーニングや素朴な味を楽しむきっかけにもなることでしょう。

まだ食べたことがないよ、という方はこの機会にぜひ「五万石」をお試しください。

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この記事で紹介されたスポット

五万石藤見屋

本町通 和菓子、ういろ

スイーツ

TEL : 0564210919

休 : 無休(月1~2回休みあり)

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