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[ 撮影スポット ]
2022.01.13
【散策】康生、2階の美学 -まちなかレトロ探訪-
康生通りを歩きながら、ふと視線を少し上へ。
すると、今まで見えなかったものを見る事ができます。
昭和20年の岡崎空襲で焼け野原となった康生エリア。
戦後は復興の象徴として、華々しく発展しました。
あれから数十年。
まちはまた少し表情を変え、当時のごった返すようなにぎわいはないものの、成熟した街としての佇まいを感じさせてくれます。
今回は、康生の建物の「2階」から見えてくる、「まちの人柄」をクローズアップして、みなさんにお届けしようと思います。
「五万石藤見屋」
瓦屋根を使い、どっしりとしたお城をイメージさせる美しいカーブが、空に良く映える。
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当時、隆盛を誇った康生エリアの商店街は、他の地方都市に多い、小ぶりの似たような店が軒を連ねるタイプの商店街とは一線を画していました。
「康生」に店を出すという事は、一国一城の主となる事。
その誉れを体現するかのように、店の建物の一つ一つが趣向を凝らした作りになっています。
「竹村屋跡地」
銅板が貼られた建物二階部分は、かつてはピカピカと光る赤茶の壁面だったと思われる。
陽と雨風にさらされる中で、経年によって変化した銅板のピーコックグリーンは美しく、非常に価値の高いレトロ建築。
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繁栄を象徴するかのような個性的な建物も、時を経て少しずつ朽ちてゆきます。
商う人々が時に代替わりしたり、貸し物件となったり、店が閉店するなど、人の出入りは繰り返され、昭和・平成・令和を渡り、今日に至るまでまちの営みは続いています。
「さくらや本店」
もう決して同じものは作れないであろう、古い時代の「窓ガラス」の風合いと、それを取り囲む枠の細工がとても綺麗。
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建物は古くなっても、人の生活は続きます。
このまちでは、1階部分を商いに、2階部分を住居に使う人が多いのが特徴です。
人が頻繁に訪れる1階の「商い部分のみ」を新たに改装したため、1階は現代の様相をしているのに、2階は昔のまま時が止まるという、不思議なアンマッチが生まれました。
「bar megane(バーメガネ)跡地」
このビルには、白い女性のようなモニュメントが浮かび上がる。ひさしの下で優雅に寝ころぶ姿を見上げると、なんだかこちらまでまったりした気分に。
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一つ一つの建物に個性を見ると、当時の店主さん達の情熱が伝わってくるような気がします。
店を構える時には、「どんな建物にしよう、他の店に負けないようなモダンで洒落た店にしたい!」と、胸を躍らせていたのかもしれません。
「正文館書店」
建物の側面に回ると、丸みを感じる不思議な窓枠が並ぶ。間に挟まったスクエアタイル状のガラスとの対比が美しい。
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ひと並びの商店街ではなく、自分だけの最高の店を作り上げたい!という三河商人の、良い意味でのこだわりの強さが生み出したこれらの「美しいレトロ遺産」は、少し視線を上にあげて歩くと様々な場所に見る事が出来ます。
人は一見控えめで穏やかなのに建物にはしっかりと個性が出るところに、三河商人としての誇り高さを感じます。
「La Himawari(ラひまわり)」
二階部分にガラスのタイルがあしらわれ、ひまわりの花を模している。当時、2階部分にガラスタイルのモチーフを使う建築が流行したそう。
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まちは人がつくります。
少し変わった視点にはなりますが、建築から「まちの人柄」を読み解いていくのも、散策の魅力の一つではないでしょうか。
2階部分のアンマッチにノスタルジーを感じながら、アチコチの建物を見上げて回るのは楽しかったです。
これ以外にも、いろんな素敵な「2階」が存在するので、皆さんも康生を歩くときは、ぜひ視線を少し上へ。
まちなかに点在する素敵なレトロ遺産を探してみて下さい。
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